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多焦点眼内レンズの臨床成績

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日本では、年間約120万件の白内障手術が行われています。先進医療として承認されている多焦点眼内レンズは、このうちの1.5~2.0%で使用されていると推計されます。多焦点眼内レンズの臨床成績については、過去に多数の報告があります。

海外の多焦点眼内レンズ臨床成績

2016年に眼科の中でも白内障専門領域の雑誌の一つであるJournal of Cataract and Refractive Surgeryメタアナリシスの結果が報告されています1。この研究は、2015年1月12日までに世界で発表された多焦点眼内レンズに関連する論文から、信頼性の高い研究213件を選択し、内容を解析したものです。その結果、多焦点眼内レンズ挿入後の遠方裸眼視力は単眼で平均0.89(8797眼の平均)、両眼で0.91(6334名の平均)で、眼鏡を使用しないで生活されている方の割合は80.1%でした。一方、見え方の質の指標であるコントラスト感度は、約1/3の研究では単焦点眼内レンズと同等でしたが、2/3の研究では、正常範囲ではあるものの、単焦点眼内レンズよりは悪い、という結果でした。
また、2016年に報告された別のメタアナリシスもあります2。これは1946年1月から2016年1月までに世界で発表された関連論文から、合計2230名のデータを含む信頼性の高い研究20件を選択し、内容を解析したものです。多焦点眼内レンズは単焦点眼内レンズと比較して遠方視力は同等、近方視力はより良好であり、眼鏡を使用しないで生活できる方の割合は高いことが報告されていますが、一方で単焦点眼内レンズよりもグレア・ハロ※※などの有害な視覚現象の発生が多く、見え方の質の指標であるコントラスト感度は低いとされています。したがって、単焦点眼内レンズと比較して多焦点眼内レンズがよいかどうかは、患者によって異なり、どちらにするか決める際には、眼鏡をかけないで生活したいかどうかを考慮することが重要であると結論されています。

国内の多焦点眼内レンズ摘出例報告

日本国内全体の臨床成績をまとめた報告は今のところありませんが、多焦点眼内レンズを挿入後になんらかの理由で摘出した例に関する調査結果が2014年に報告されました3。これは国内の10施設で行われた、多焦点眼内レンズ摘出例37名50眼の摘出原因を解析したものですが、それによれば、最も摘出原因として多かったのがコントラスト感度の低下(36%)、次いでハロ※※(34%)でした。これは、前述のメタアナリスで指摘されている多焦点眼内レンズの欠点が、人によっては摘出にいたるほどの問題になる可能性があることを示しています。

多焦点眼内レンズ選択を選択する前に

多焦点眼内レンズによって眼鏡無しで生活できるようになるメリットがある一方で、再手術を行い摘出しなければいけなくなる症例も報告されています。多焦点眼内レンズを希望する際には、これらのデメリットについてもよく考えてから決定して下さい。

注釈

メタアナリシス(meta-analysis):複数の研究結果を統合し、分析するための手法で、根拠に基づいた医療(EBM:Evidence based medicine)において、最も質の高い根拠とされる。
※※
手術後に暗いところ(夜間など)で光をみたときに、非常にまぶしく感じてみえにくくなったり、光の周囲に光の輪がみえたりすることがあります。前者をグレア、後者をハロとよびます。

文献

  • Rosen E, Alió JL, Dick HB, Dell S, Slade S. Efficacy and safety of multifocal intraocular lenses following cataract and refractive lens exchange: Metaanalysis of peer-reviewed publications.J Cataract Refract Surg. 2:310-28, 2016.
  • de Silva SR, Evans JR, Kirthi V, Ziaei M, Leyland M. Multifocal versus monofocal intraocular lenses after cataract extraction.Cochrane Database Syst Rev. 2;12:CD003169, 2016.
  • Kamiya K, Hayashi K, Shimizu K, Negishi K, Sato M, Bissen-Miyajima H; Survey Working Group of the Japanese Society of Cataract and Refractive Surgery. Multifocal intraocular lens explantation: a case series of 50 eyes. Am J Ophthalmol. 158:215-220, 2014.

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